近年、遺品整理の現場において、故人が遺した番号不明のダイヤル式金庫の扱いに頭を悩ませるご遺族が増えています。生前に番号を聞いていなかった、あるいは番号を記したメモが見つからない。そんな状況で発見された「開かずの金庫」は、ご遺族にとって大きな悩みの種となります。中には、遺言書や土地の権利書、保険証券、あるいは現金や貴金属といった、相続手続きを進める上で非常に重要なものが入っている可能性があるため、そのまま処分するわけにはいきません。このようなケースで、まずご遺族が試みるのは、故人にゆかりのある数字を片っ端から試すことです。故人の誕生日、結婚記念日、住所、電話番号。しかし、故人がどのような意図で番号を設定したのかは、今となっては知る由もありません。多くの場合、これらの試みは徒労に終わります。そこで、次の選択肢として浮上するのが、専門の鍵屋に解錠を依頼することです。遺品整理の現場では、時間的な制約があることも多く、迅速に対応してくれる出張専門の鍵屋は非常に頼りになる存在です。依頼する際には、金庫の解錠が遺品整理の一環であることを伝え、見積もりを取ります。業者によっては、解錠後の金庫の処分まで一括して引き受けてくれる場合もあります。実際に解錠作業に立ち会ったご遺族からは、様々な声が聞かれます。金庫の中から、全く知らなかった故人の趣味のコレクションや、家族に宛てた手紙など、お金には換えられない思い出の品々が見つかり、故人の新たな一面を知るきっかけになったという話は少なくありません。もちろん、中身が空だったり、期待していたようなものが入っていなかったりすることもあります。しかし、中身を確認し、「何もなかった」という事実を知ること自体が、ご遺族の心の区切りとなり、次のステップへ進むための重要なプロセスとなるのです。遺品整理で発見された開かずの金庫は、単なる鉄の箱ではありません。それは、故人が遺した最後の謎であり、ご遺族が故人と向き合うための、一つの大切な儀式と言えるのかもしれません。