スマートロックというと、多くの人は玄関の鍵を思い浮かべるでしょう。しかし、その技術の波は、今や家の内側、つまり個々の「部屋の鍵」にまで及ぼうとしています。これまで単純なプライバシー保護の道具でしかなかった部屋の鍵が、スマート化されることによって、私たちの暮らしにどのような新しい価値と可能性をもたらすのでしょうか。その一つが、より柔軟で高度な「見守り」の実現です。例えば、子供部屋にスマートロックを導入すれば、親は自分のスマートフォンから、子供がいつ部屋に入り、いつ出てきたのかをリアルタイムで把握することができます。これは、子供の生活リズムを把握したり、引きこもりの兆候を早期に察知したりする上で、非常に有効な情報となり得ます。また、「オートロック機能」を設定しておけば、子供が部屋に入った後、自動で施錠されるため、プライバシーを確保しつつ、鍵の閉め忘れを防ぐことができます。在宅介護の場面でも、その可能性は広がります。認知症の家族がいる部屋に設置すれば、深夜の徘徊防止に役立てることができますし、万が一、部屋の中で何かあった際には、遠隔で解錠して安否を確認することも可能です。さらに、スマートロックは、他のスマートホーム機器との連携によって、その真価を発揮します。例えば、「部屋の鍵を開けたら、自動的に部屋の照明とエアコンがつき、好きな音楽が流れ始める」といった、まるでSF映画のようなパーソナライズされた空間を、簡単に作り出すことができるのです。書斎に入れば集中モードの環境が、寝室に入ればリラックスモードの環境が、鍵を開けるというワンアクションで自動的に構築されます。もちろん、導入コストや、電池切れ、ハッキングといったデジタルならではのリスクも考慮する必要があります。しかし、それらを差し引いても、スマートロックが部屋の鍵にもたらす革新は、私たちのライフスタイルをより安全で、快適で、そして自分らしいものへと進化させてくれる、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
スマートロックが拓く個室の新しい可能性