コインロッカーの鍵をなくしたという緊急事態は、人を冷静な判断ができなくさせ、時に誤った行動に走らせてしまいます。しかし、良かれと思って取った行動が、かえって事態を悪化させ、余計な費用やトラブルを招くことも少なくありません。自分の身を守るために、鍵を紛失した際に「絶対にやってはいけないこと」を心に刻んでおきましょう。第一に、自力でこじ開けようと試みること。針金やヘアピンを鍵穴に差し込んだり、傘の先で扉の隙間をこじったりといった行為は、百害あって一利なしです。素人が付け焼き刃の知識で錠前をいじっても、開けられる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。それどころか、鍵穴の内部や扉を傷つけてしまい、錠前一式の交換費用や扉の修理代として、通常の違約金よりも遥かに高額な損害賠償を請求されることになります。第二に、その場を離れて問題を放置すること。「今日はもう遅いから、明日また探しに来よう」と、荷物を入れたままロッカーを放置するのは非常に危険です。利用期限を過ぎたロッカーの荷物は、管理会社の規定に従い、別の保管場所に移されてしまうことがあります。そうなると、荷物を取り戻すために、さらに複雑な手続きと追加の保管料が必要になります。また、紛失した鍵が悪用されるリスクも高まります。問題の先延ばしは、何一つ良い結果を生みません。第三に、ロッカーの管理者ではない、駅員や施設の警備員などに無理な対応を求めること。彼らは親身に相談に乗ってくれるかもしれませんが、ロッカーの管理権限は持っていません。彼らに解錠を迫っても、規則上応じることはできず、お互いに困ってしまうだけです。トラブル解決の窓口は、あくまでロッカーに記載されている管理会社ただ一つです。鍵をなくした時の正しい行動は、非常にシンプルです。「何もせず、すぐに正規の管理会社に連絡する」。この原則さえ守れば、問題がそれ以上に大きくなることはありません。焦る気持ちが、最も危険な罠なのです。